【2025年更新】インフレが不安……老後に必要な貯金額は?【フリーランス/個人事業主/自営業】
こんにちは。ケイ (@kei_nomad) です。
※下記は、2020年に書いた記事を2025年1月現在に書き直したものです。インフレ対応版。より恐ろしい結果に。。。
一時期、老後資金としては2000万円の貯金がいると話題になりましたね。しかし、これはいわゆる厚生年金のあるサラリーマンの話なので、保障の少ないフリーランス・個人事業主・自営業は実際どのくらい必要なのか計算してみました。
この記事では、必要だと思われる貯金額と、今からできる対策について書いていきたいと思います。
また、近年ではようやくインフレが当たり前の時代になってきました。したがって、インフレを加味した老後資金額を検討する必要があります。
結論: フリーランス・自営業には6600~4900万円程度の貯金が必要
はい。もうとんでもない金額ですね……。
しかしながら、色んな仮定のもとでこの数字は出しています。計算根拠と前提は以下の通りです。
ただし、後述するようにちょっと考えたらこの額は結構減りますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
老後に必要となる貯金額の計算内訳
前提
- 老後一人暮らし (こうなるとちょっと寂しい感じもしますが、結婚率の低下を考えると十分にあり得る話ですので)
- 健康面で少し不安が出てきているところ
- 仕事は60歳で退職
- 80歳で死ぬ予定(日本人男性の平均は81歳ですが、ここは切りの良い80歳で)
- 30年後の物価として以下を想定
老後にかかるお金の内訳
まず、老後にはどんなことにお金をかかるのか見ていきましょう。大きく分けると次の2つです。
生活資金
当然ですね。で、計算では、月16万と考えています。この根拠ですが、こちらの記事を参考にしました。なので、月16万円 x 12 で192万円、192万円 x 20年 = 3840万円となります。生活費だけで4000万近くもかかるわけです。
医療費
60歳以降に大体1600万円かかり、このうちの3割負担として480万円必要とします。
3割負担が2割だったり1割だったりすることはありますが、国の財政事業を見ると、私たちが老人になったときは現役世代と同じだけ負担させられる可能性は決して低くありません。
というか、個人的にはほぼ間違いないと考えています(それどころか、4割負担とかもありえますが、全く予想がつかないので、とりあえず3割としておきます)。
葬式費用
現在、平均としては195万みたいです。ただ、これはやり方で結構変わるみたいです。
出費まとめ
というわけで、上記3つを足すと以下のようになります。
3840万円 + 480万円 + 195万円 = 4515万円
これに、物価変動を踏まえると……
- インフレ率2%パターン: 4515万円 * 1.8 = 8127万円
- インフレ率1%パターン: 4515万円 * 1.35 = 6095万円
老後で考えられる収入源
老後で考えられる収入源は、何もしていなければおそらく年金のみでしょう。
国民年金の現在の支給月額平均55,000円 (年66万円) で、支給開始は65歳からです。
そして、年金支給額もインフレ率によって支給額が変化します。ただし、「マクロ経済スライド」という仕組みがあり、インフレ率ほどは上がりません。計算方法をいろいろ調べた結果、ここではざっくりインフレ率の半分とします。そして、30年後から支給開始と考えると、開始時点のインフレ率と、支給終了時のインフレ率を加味する必要があります。ひー、計算がめんどうくさい。
しかし、結論から言うと、インフレ率2%パターンの場合は1548万円、インフレ率1%パターンの場合は1231万円程度が収入として考えられます。下記計算式です。
インフレ率2%パターン (マクロ経済スライド調整後1%を想定)
支給は30年後とすると、開始時点で現在の支給額より35%アップ。なので、
- 66万円 * 1.35 = 89万円
そして、15年支給があるとすると、
- 89万円 * 15年 = 1335万円
これに、15年後のマクロ経済スライド調整を加味した支給額増加を考慮すると、16%ぐらい上がるので、
- 1335万円 * 1.16 = 1548万円
インフレ率1%パターン (マクロ経済スライド調整後0.5%を想定)
支給は30年後とすると、開始時点で現在の支給額より16%アップ。なので、
- 66万円 * 1.16 = 76万円
そして、15年支給があるとすると、
- 76万円 * 15年 = 1140万円
これに、15年後のマクロ経済スライド調整を加味した支給額増加を考慮すると、8%ぐらい上がるので、
- 1140万円 * 1.08 = 1231万円
計算まとめ
下記の通り、必要な額が3200~6500万円と、大きなばらつきがあるものの、インフレ調整後の必要額がえげつなくなることがわかります。。。
インフレ率2%パターン
8127万円 - 1548万円 = 6579万円
インフレ率1%パターン
6095万円 - 1231万円 = 4864万円
老後の蓄え以外にかかってくるお金
これはむしろ現役時の話になりますが、もし子供がいれば、上記の貯金以外で教育費や養育費等も必要になってきます。
ざっくりと、子供一人に対して年100万ぐらいかかります。本当にざっくりとした金額だし、大学行くかどうか、どんな大学に行くかによって変わってきますが。
いやー、世の中のパパママが「金がねえ」って言うのわかりますよ……。
今からできる対策
貯金
まずは貯金ですよね。
上の前提に立ち、もしあなたが今30歳だとすると、65歳になるまでに毎年187~93万貯金する必要があります。
ひええ。危機感持ちましょう……。
もっと稼ぐ
フリーランスなら、これも貯金と同じぐらい考えるべきことですよね。
お仕事を頑張れば頑張るほど、当然貯金も資産運用もしやすくなります。節税?そんなことを考える暇あるなら、一つでも多く受注した方が結果的に手元に残る金は多くなります……!最低限はすべきですけどね。
フリーランス・個人事業主が利用できる社会保障制度を利用する
国民年金
とりあえず加入が義務づけられている国民年金ですが、未納の人も多いです。が!!!絶対払っておきましょう。むしろ払わないと損するのはあなたです。詳しくは国民年金について書いた記事を読んでもらうとして、ここでは軽く理由を3つ説明します。
- 国民年金の資金源の半分は税金
これがどういうことを意味するかというと、国民年金は未納にできる一方で、税金は何があろうが絶対に払うことになります。そして、国民年金が未納の場合、(当然ですが)受給資格はありません。となると、半分は税金で支払っているのに年金は受け取れないという摩訶不思議な状態が発生します。払っているのに受け取れないなんて嫌ですよね??(仕組み自体これどうなの、と思いますが) - 障害年金を受け取るには国民年金を支払っている必要がある
障害年金の利点は、自分が何か事故か病気で働けなくなり、障害認定を受けたら国からお金が支給されることです。障害を負って仕事がなくなった時点で金銭面ではかなりの負担が出ることが予想されますが、この時に「未納してたから障害年金が降りない……」となると踏んだり蹴ったりです。で、誰も自分が障害を負ったりすることなんて想像出来ません。人生には本当にどうしようもないこともあります。そういったリスクを国民年金を支払って低くできると思えば、それだけでもペイできると思いませんか? - 元が取れる人の方が多い
国民年金の損益分岐点は75歳です。とはいうものの、受給年齢とか受給額とか変わってきているので一概には言えませんが、平均寿命が男性で81歳と考えると、悪くありません。また、国民年金自体が崩壊するのでは、という意見もありますが、たぶんないです。国の根幹にかかわる社会保障であること、金額がでかすぎること、そして、受給年齢とか色々ずらせられる(嫌ですけどね!)ことを考えると、たぶん崩壊自体はないと思われます。ずらしまくって金額も減らしまくった状態を「崩壊していない」といえるのかという問題もありますが……。また、払ったら税金が控除されるので、節税効果もあります。
確定拠出年金(iDeco)
最大額は決まっているものの、かけた分は全部税金が控除されるという代物。預けたらそれを自分で資産運用する感じですが、問題は60歳までお金を下ろすことはできません。これは良くもあり悪くもあります。
- 良い点
株式投資の場合、基本的に10年や20年の長期で考えるとまず損しないです。
短期的に不景気になって資産価値が目減りすることもありますが、長期スパンなら大体戻ります。また、安くなって「狼藉売り」という現象が原理上無理です。
心理的にもやりやすくなっていますね。 - 悪い点
60歳までお金を下ろせないので、資金の流動性がほぼありません。
これが何の問題になるかというと、フリーランスとか自営業だと、急にお金が必要だったり、生活が不安定だから切り崩したくなるときがサラリーマンより多くなります。となると、一度預けたら下ろせないというのはそこそこリスクになってしまいます。
国民年金基金
掛け金2万からで、国民年金にプラスオンできます。これも所得控除の対象です。イデコと似た部分としては、これもお金を下ろすことはできません。
ただ、違うのは、これは自分で運用する必要はありません。また、かけた時点で受給額が決定される仕組みなので、インフレ時は実際に受け取れる額が物価に対して目減りする可能性があります。
小規模企業共済
月額1,000円~最高70,000円の範囲内で共済に積立できます。掛け金は全額所得控除なので、iDecoと同じく大変なお得な制度。原則、個人事業主として辞めた時に引き出せます。いわゆるサラリーマンでいう退職金の代わりですね。
ちなみに、国民年金基金に入っていると入れません。個人的には、小規模企業共済の方がおすすめです。
資産運用をする
上記の年金関係の制度以外にもNISAもあります。2024年からは制度が改善され、年最大360万、最大1800万円分まで無課税で投資できます。で、個人投資家の年間平均利回りは5-9%であること、長期運用を前提に複利で増やすことを考えると、余剰資金を投資に回すのも悪くありません。ただし、無理のない範囲で!
ちなみに、年5%増えると仮定して20年を複利で回すと、おおよそ65%増えます。
イデコ、国民年金基金、小規模企業共済と比べると、お金が急に必要になったときも比較的すぐに下ろせるのも良い点です。
ほったらかし投資を前提として、余剰資金をこちらにまわしておき、あとはひたすら金を稼ぐ、というやり方がフリーランスにはおすすめです。投資に時間をかけるなら、仕事に集中してた方が予後は良いです。趣味なら別ですが。。。
とりあえず、資産運用額は増えれば増えるほど有利になっていくので、若い頃からコツコツ継続しましょう……。
※個人事業主向けの投資方法の記事も書いています。
必要な貯金額を減らすには?
じゃあ、そもそも必要な額を減らすにはどうしたら良いんだろう、というのも当然考えますよね。以下では、その案について見ていきます。
老後の生活資金を減らす
上は1人暮らしとして月16万計算ですが、夫婦で二人なら約24万です。つまり、一人当たり12万円ですね。上記の生活費をその12万に差し替えて計算すると…
- 12万円 * 12カ月 = 144万円
- 144万円 * 20年 = 2880万円 (一人当たり生活費)
- 2880万円 + 480万円 + 195万円 = 3555万円 ※上記で書いた医療費やらなんやらをプラス
なので、生活費としては1人当たり1000万減らせられます。これに上記のインフレ率を考慮すると…
- インフレ率2%パターン: 3555万円 * 1.8 = 6399万円
- インフレ率1%パターン: 3555万円 * 1.35 = 4799万円
これに、もらえる年金の分を差し引くと……
- インフレ率2%パターン: 6399万円 - 1548万円 = 6399万円 (1700万円マイナス)
- インフレ率1%パターン: 4799万円 - 1231万円 = 3568万円 (1200万円マイナス)
つまり、1人当たり6399~3568万円の貯金を用意すればOKとなります。
かりに現在30歳として、今後30年間貯金をしたとすると、下記の年間貯金額で済みます。
- 6399~3568万円 / 30年 = 213~119万円
したがって、誰かと一緒に住むというのは、生存戦略として非常に有効と言えます。
健康な状態を出来るだけ維持する
医療費の支払いは高額療養費という制度があり(リンク先は協会けんぽですが、大抵どの健康組合に付いています)、支払った額の一定額以上は還付されることから天井は知れています。しかしながら、一時的にめちゃくちゃ金を支払う必要があること、天井があるとはいえかなりの額を支払わないといけないので、金が文字通り吹っ飛んでいきます。歳を取れば健康上の問題が色々出てくるのは仕方ありませんが、普段の心がけで多少はマシにはなるし、その方がQOLもきっと良いでしょう。
というわけで、今から健康に気を遣っときましょう。それによって将来の自分を健康面だけじゃなくて金銭面でもサポートできます。
二人暮らしで70歳まで1人当たり月5~10万稼ぐ
元気なうちはできるだけ働くようにすることで、さらに必要な資金を減らすことができます。そもそも、年金支給開始は65歳ですし、これもいつ引き上がるかわかりませんしね。とはいえ、何も現役時のようにたくさん働く必要もありません。下記は、金額に応じたシミュレーションです。
1人あたり月5万の場合
- 5万円 * 12カ月 = 年60万円
- 60万 * 10年 = 600万円
これに、上記の年金考慮後の金額から差し引くと……
- 6399~3568万円 - 600万円 = 5799~2968万円
同じように30歳から貯金開始をしたとすると、
- 5799~2968万円 / 30年 = 193~98万円
したがって、年193~98万円貯金できれば良いわけです。
1人あたり月10万の場合
- 10万円 * 12カ月 = 年120万円
- 120万 * 10年 = 1200万円
これに、上記の年金考慮後の金額から差し引くと……
- 6399~3568万円 - 1200万円 = 5199~2368万円
同じように30歳から貯金開始をしたとすると、
- 5199~2368万円 / 30年 = 173~79万円
したがって、この場合は年173~79万円の貯金で良いわけですね。
身も蓋もないことですが、元気なうちは働いておくのが色んな意味で正解です。
だけど、最悪貯金無くてもなんとかなる
と、長々と色々書いてきましたが、「どうしようもなんねえ」って時が訪れるかもしれません。本当にどれだけ対策してても、人生にはどうしようもならない局面が訪れることがあります。その時は、生活保護を利用しましょう。他人から何を言われようが、生活保護は国民の権利です。間違っても、「俺は生活保護なんてもんには頼らねえ!」なんて言わないでください。世間の目は冷たいですが、彼らは責任も取ってくれないし、助けてくれませんからね。
ただ、生活保護の認定は結構面倒くさいとか、貯金があると受け取れないとか、色々制限はあるので、調べておきましょう。
繰り返したいのは、金銭的な面で人生に行き詰まっても、大抵は本当になんとかなります。面子さえ気にしなければ。面子なんてものは犬に食わせておけば良いのです。
まとめ
というわけで、必要な老後資金について説明しました。
2025年現在、ついにインフレ時代に突入しようとしているので、インフレを考慮した計算にしたところ、なんともえげつない結果になったものだなと感じています。日銀のインフレターゲット率が順調に達成されたとすると、1.8倍ですからねー。とはいえ、それが実現されている世の中なら、預金金利も順調に伸びているはずなので、思っていたよりはマシかもしれません。
一番のベストプラクティスは、生涯現役を前提とした人生戦略ですね。「老後はリタイアしてゆっくりする」という考え方を捨てた方がリスクは低いと思います。何とも夢がないように聞こえますが、そもそもそういう考え方自体はここ数十年だけ可能だっただけの可能性が高いです。それに、何かしてた方がボケ防止になって良いです。
なお、計算がかなり複雑になった影響で途中で計算が適当になっている可能性があります。ご承知置きください。。。